【回想】憧れた人

「最終的には自分が幸せになりたいと思う方へ進むべきだと思うよ。」

 

女友達から言われた事だが

妙に納得できた。

 

世間体を気にすることと自分の幸せとは必ずしも一致しないのだ。

 

俺は悪い人間だ。だが肩は軽くなった。

 

 

 

彼女のTは住んでいるところが少し離れた場所だったから会うのは週に一回だったが連絡は毎日取り合っていた。

 

あくまで人との繋がりを増やしておきたかった自分は、

憧れ云々は抜きにしてAさんと食事する事にした。

 

平日の夕方。

 

高校以来見ていなかったAさんは

仕事終わりのスーツ姿でなんともまた新鮮な印象であった。

 

他愛もない話をした。

目の前に居るのが女性ではなく、

あくまで人の繋がりを…

というのは最早方便に成り下がっていた。

Aさんは長年付き合った彼氏に浮気されて別れていた。

 

食事を終えて外に出るとすっかり暗くなっていた。

そうだ、今日は平日だった。明日も仕事あるし…

 

「どうしよ、明日も仕事だし帰る?」

とりあえず聞いてみた。

 

「ドライブ行きたい!」

 

車を走らせて

この流れはまさか…とか思ったり

彼女が乗ってた助手席にAさんが乗ってる…とか思ったりして

変に緊張していた。

 

夜景。

田舎のドライブデートの定番。

なんてベタな、とか思っても田舎のドライブはそのぐらいしか無い。

 

タバコの火を消して、じゃあ次はどうしようか、と話しかける。

 

既に12時を回っていたがAさんは帰るとは言わない。

 

「…家くる?」

「行きたい」

 

まさか自分の部屋にあのAさんがいるなんて。

数年前の自分が予想できただろうか。

一回くらいは…

その日、憧れていた女性を抱いた。

 

別れたあと、我に返り

自分は交際中のTに対しとんでもないことをしたと思った。

 

後日、Aさんから告白された。

 

なんでも、落ち着けるからだそうだが、

いかんせんAさんは失恋直後だ。

混乱しているだけかもしれない。

それにAさんには彼女がいる事を教えていなかった。

自分自身、少しだけ考える時間が必要だった。

 

酷い野郎だが、二股関係は良くない事は知っていた。

 

悩み、

知り合いの女友達に相談したとき、

冒頭に書いた台詞を言われた。

 

本当に一緒になりたいのは

1つ上の、憧れた人だった。